脳科学研究からみた英語学習法 #1

最新の脳科学の入門書を読みあさる

本当に効率的な英語の学習方法を本気で調べるために、まず脳のことを勉強してみようと思いました。巷にはいろいろな英語の勉強方法が氾濫しています。自称「英語の達人」の方々が色々なことを言っています。そのうちのどれかを徹底的に調べたとしても、それが本当に良い学習方法なのかを見極めるのは難しい。それと、私の脳が特定の方法に感化されてしまう可能性もある。なので、先ずは直接英語とは関係ないけど、避けて通れないところから見てみようと。

最新の脳科学についての入門書を数冊買い込みました。脳神経外科専門医の築山節氏や、東京大学大学院助教授の酒井邦嘉氏、東京大学大学院准教授の池谷裕二氏などの書籍を読みました。その中で、わかりやすく且つ効率的な英語の学習方法のヒントが多く載っていたのが、池谷教授の「記憶力を強くする〜最新脳科学が語る記憶のしくみと鍛え方」です。

脳科学者池谷氏による効率的な学習のための12のヒント

池谷氏の本の中で、英語の効率的な学習法のヒントとなる部分を抜粋させてもらいます。

    1. 脳内の神経細胞(ニューロン)の総数は歳とともに減っていくが、脳の数百億個の神経細胞をつなぐ役割をになうシナプスは歳とともに増加する。つまり神経回路は年齢を重ねるにしたがって増加し、記憶の容量が大きくなる。
    2. しかし、歳とともに得意とする記憶の種類が変化する。言語を覚える能力は六歳ぐらいまで特に高いことが知られており、それ以降は学習のスピードが格段に遅くなる。幼少期は、意味の無い文字や絵や音(絶対音感など)に対して絶大な記憶力を発揮するのに対し、歳とともに論理だった記憶能力がよく発達する。つまり、物事をよく理解して、その理屈を覚える能力が高くなる。そしてそのように記憶したことは忘れにくくなる。
    3. シナプスの性質から、ものごとをお互いに関連づければ覚えやすくなる。言い換えれば、脳は物事をよく理解したときだけそれをしっかり記憶する。脳は合理的なので、無意味なことに余分なエネルギーを使わない。理解することは、知識を消化するということ。知識が消化されればその知識を使ってまたさらに多くの事を理解できる。そして数多くの事象が次々と神経回路の中でつながって、さらに記憶力が増強される。
    4. 更に、自分の経験と結びつけて記憶した方が忘れにくく、思い出しやすくなる。覚えた知識を人に説明する事は非常に有効。自分がしっかり理解していなければ人に説明できない。
    5. スウェーデンの神経生理学者は、θ波はシナプスの活動を活性化することを発見したが、これは脳内にθ波を発生させれば記憶力が向上するということ。θ波を発生させられるもっとも効果的な方法は、覚えたいものに興味を持つ事。何にでも興味を持つ「好奇心」と「探究心」こそ記憶にとって非常に重要。更に、環境に対して敏感になり、刺激を多く受けると言う事は、記憶に必要な脳内の神経細胞(顆粒細胞)を活発に増殖させることにつながる。
    6. 目の記憶より耳の記憶のほうが心に残る。進化の過程で動物は目よりも耳を良く活用してきたので、耳の記憶は目の記憶よりも強く心によく残る。
    7. 記憶の一時的な保管場所である海馬は、長くて1ヶ月程度しかその記憶を保管しない。海馬がその記憶を保管しているうちに、覚えたい情報をもう一度海馬に送信すれば、海馬はその情報を「必要」な情報と判断し、その後、長期的に記憶を保存する側頭葉に「これを記憶せよ」と指示し、側頭葉に保存される。
    8. ドイツの心理学者エビングハウスの実験(エビングハウスの忘却曲線)を考慮にいれると、科学的にもっとも能率的な復習スケジュールは、まず1週間以内に一回目、次にこの復習から二週間後に二回目、そして最後に二回目の復習から一ヶ月後に三回目と、一回の学習と三回の復習を少しづつ間隔を広くしながら二ヶ月かけて行えば、海馬はその情報を必要の情報を判断してくれる。
    9. 現在の脳科学の見解によれば、夢は脳の情報を整え、記憶を強化するために必須な過程であるとされている。米国の精神医学者のスティックゴールドは2000年の認知神経科学雑誌に、何か新しい知識や技法を身につけるためには、覚えたその日に六時間以上眠ることが欠かせないという研究結果を発表した。一睡もせずに詰め込んだ記憶は、側頭葉に刻み込まれることなく数日のうちに消えてしまう。
    10. 寝ている間に記憶がきちんと整理整頓され、その後の学習を助ける現象をレミニセンス(追憶)現象と呼ばれているが、これは、一日6時間まとめて学習するよりは、2時間ずつ三日にかけて学習した方が、途中に睡眠が入るため、その間に記憶が整理整頓されるため、能率的に習得できるということにもつながる。
    11. 学習の手順をきちんと踏めば、より早く覚えられるという脳の性質も重要。学習手順には慎重に気を配った方が賢明。いきなり高度なことに手を出すよりも、基礎を身につけてから少しづつ難易度を上げていった方が、結果的には早く習得できる。一般にものを習得するときには、まずは大局理解しておくことが大切。始めは細部を気にせず、おおまかに理解し、細かいことは、その後で少しづつ覚えていく。
    12. 学習の効果は幾何級数的なカーブを描く。学習の目標を1000とした場合、学習を始めた時点を1とすると、2、4、8、16、32、64と累積効果を示していく。この時点では1000までは程遠いと思うかもしれないが、128、256、512とくればもう一息で1024になる。このような成長パターンを示すのが脳の性質。このことから、物事の習得でもっとも大事なことは、(特に学習初期段階での)努力の継続であることがわかる。努力と成果は比例関係ではなく累乗関係にあるから、すぐに成果が現れないからといってすぐに諦めてはいけない。

脳科学入門から「聞くだけでペラペラ」は非効率な学習方法だとわかります。

2番目をもうちょっと詳しく説明しようと思います。人間の記憶は大きく分けて長期記憶と短期記憶に分かれており、言語習得に深く関係する長期記憶は更に4つに分かれているそうです。その4つの記憶のうち、掛け算の九九などの頭に詰め込む(丸暗記の)記憶である「意味記憶」と、理論や理屈による記憶である「エピソード記憶」があるそうです。こどもの頃は、意味の無い文字や音などに対して絶大な記憶力(意味記憶)を発揮し、それ以降は論理だった記憶力(エピソード記憶)が発達してきます。歳をとると、丸暗記する「意味記憶」能力が低下する事によって記憶力が落ちたと感じるのですが、一方で理解して覚えるという「エピソード記憶」が発達するので、記憶力が落ちたのではなく、記憶の種類が変わっただけだそうです。

このことは、英語の学習に大きなヒントになりますよね。例えば、「聞くだけでペラペラ」教材はまさに、こどもが九九を覚えるように丸暗記する学習法です。丸暗記が得意なこどもの脳とは性質の違う脳をもった大人には、この方法は非効率な学習方法だといういことがわかりましたね。

次回は、12のヒントを応用した具体的な英語の学習方法について書きます。

今回は長くなったのでこの辺にします。次回は、池谷氏の上の12のヒントから示唆される具体的な英語の学習方法について考えてみます(なぜ文法を学習しなければならないのか?覚えた単語や文法などの知識を使える様にするには?など)。

English Tutors Network のWebsite でも、詳しく説明していますので是非。(www.etn.co.jp)

 

英会話ETNトレーニング法」をオープンしました。ETNで行われているトレーニングプログラムを公開しています。英会話は自主トレで上達します。(2016年12月15日追記)  

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